弱気"になったジョージ・ソロス、金(ゴールド)買いに走る
ジョージ・ソロス氏は中国経済のどこを見て崩壊を予言しているのか?
あまりメディアで積極的に発言しないことで知られるジョージ・ソロス氏。しかしながら、今年に入ってからの露出度は異様なレベルでした。
スリランカのコロンボで開催された経済フォーラムで、次のように語りました。
「中国は調整に関して大きな問題に直面している。私に言わせれば危機と呼んでいいものだ。金融市場には深刻な難題が見られ、私は2008年の危機を思い出す」
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて、ブルームバーグTVに対し、次のように述べました。
「中国経済のハードランディングは不可避。これは予想ではなく、実際に目にしていることだ」
「(同時に、中国が十分な資源や3兆ドル規模の外貨準備高を持っていることなどを踏まえ、)同国がハードランディングを『乗り切ることは可能』」
<2016年4月20日>
ニューヨークで開催されたアジア・ソサエティーのイベントで、中国の現状について、次のように述べました。
「(今の中国は)与信の伸びで増強されていた07-08年の米国の金融危機当時と不気味なほど似ている」
「皆が予想する時期よりも後に転換点を迎える可能性がある」
<2016年6月9日>
ジョージ・ソロス氏(85歳)は2011年に投資から引退して、慈善活動や新経済概念の構築に力を入れていました。しかし、ついに我慢しきれず、トレーディングの現場に復帰するという決断を下したのです。
非公開情報であることを理由に匿名で語った同関係者の話では、ソロス氏(85)は最近、取引を指示するためにより多くの時間をオフィスで過ごしており、一連の大口の弱気なトレードを指揮した。<中略>前四半期に米国株投資を3分の1余り減らし、金市場に賭けていた。
ソロス氏が懸念しているのは、「中国の与信の伸び」です。与信の伸び、つまり、銀行などの貸付金額が大きくなりすぎていると指摘しているのです。
経済活動の主体となっているのは、次の3つです。
政府
企業 ←中国は企業債務残高が多すぎる!
家計
この3つの経済主体のうち家計と企業は、基本的に景気が良いときは債務残高(=借金)を増やします。借金は経済にとってレバレッジにもなるので、少ない資金を効率よく活用して、どんどん経済が大きくなっていきます。
しかし、行き過ぎるとバブルになってしまって、どこかのタイミングでバブルは弾けてしまいます。
ソロスは近々、中国経済のバブルが崩壊してしまって、一気に経済が落ち込んでしまうと予想しています。中国は企業の債務残高が多くなりすぎているのです。
ちなみに、日本は政府の債務残高が多すぎます(対GDP比で約250%)。
3つの主体(政府、企業、家計)のうち、いずれの主体であっても借金が多すぎると、債務不履行になるリスクが増大します。実際の数字で確認してみましょう。
中国の企業債務残高の積み上がり方は「異常なペース」
中国は他の国を圧倒するスピードで企業債務残高を積み上げています。しかし、債務残高がいくら多くなっていても、経済全体のGDPが伸びていれば、問題はありません。対GDPの比率という点からチェックしていきましょう。
三井住友アセットマネジメントがまとめた資料によると、中国の企業債務残高は2008年から一直線に伸びています。さらに、対GDP比でも他国を圧倒する勢いで伸びています。
出典:世界の企業債務残高/企業債務残高の対GDP比 - 三井住友アセットマネジメント
出典:世界の企業債務残高/企業債務残高の対GDP比 – 三井住友アセットマネジメント
具体的な数値データを拾うと、下記の通りです。
<中国 名目GDP(概算)>
2008年 4.0兆ドル
2009年 5.0兆ドル
2010年 6.0兆ドル
2011年 7.4兆ドル
2012年 8.4兆ドル
2013年 9.5兆ドル
2014年 10兆ドル ←ここから伸びなくなった!
2015年 10兆ドル
2016年 11兆ドル ←IMF推計
<中国 企業債務残高(概算)>
2008年 4兆ドル
2009年 5兆ドル
2010年 6兆ドル
2011年 8兆ドル
2012年 10兆ドル
2013年 13兆ドル
2014年 15兆ドル
2015年 16兆ドル
<中国 企業債務残高の対GDP比(概算)>
2008年 100%
2009年 100%
2010年 100%
2011年 125%
2012年 125%
2013年 145%
2014年 150%
2015年 160%
2010年頃までは中国のGDPと企業債務残高はほぼ一致していました。ところが、中国経済は2014年頃から伸びなくなったのです。
一方、企業の債務残高はどんどん増加しています。2016年の名目GDPも、それほど伸びない見込みです(IMF推計)。
経済全体の規模であるGDPが伸びていないのに、企業の借金だけが増えていっている!これは明らかに良くない傾向です。
借金には利子がつき、その利子すらも払えなくなると、借金は複利で増えていきます。2014年頃から中国はその状況に陥っています。
1992年9月16日の英ポンド危機によって10億ドル以上もの利益を上げたことから名声を得た人物です。空売りの達人として、世界中のヘッジファンド・マネージャーにとっては、市場の先行き指標となっているのです。
ウォールストリート・ジャーナルが「弱気になったソロス」と書いているのは、どんなときでも株式市場に挑もうとする挑戦的な相場師ソロスは姿は影を潜めてしまったと言っているのです。
それは正しい表現でしょうか?
失敗しない投資家は、相場が長期間、下落すると予想した場合、いち早く資金を市場から引き上げて、資金の避難先として金(ゴールド)の現物買いに走るからです。弱気になったのではなく、しぶといのです。
「でも、それとて金への投資じゃないか」ですって?
いえ、根本的に違うのです。金は「正貨」ですから、利息や利回りがつきません。値動きはしますが、それは金の価値が変化するのではなく、通貨の価値が変動(購買力が変わる)しているので、金の価格が動くのです。あくまで通貨に対して価格が動くのであって、金のそれ自体の価値は不変です。
べネズエラで、今起こっていることを思い出してください。ベネズエラの政府債務は返済不可能なレベルに達し、デフォルトを回避するために政府が行き過ぎた為替介入を行ったため、ハイパー・インフレを招いてしまいました。
ベネズエラ政府の外貨準備は、とっくに尽きていて、支払期限がやって来た政府債務の決済を行うために、債権者のスイスに金(ゴールド)で支払っているのです。
ベネズエラの通貨は、もはや紙クズほどの価値もなくなってしまったので、どの国も受け取らないのです。このことは、商取引が通貨によってなされるのではなく、実は「正貨=金」によってなされることを示しているのです。
平成バブル崩壊前後の日本と酷似している今の中国
今の中国はバブル崩壊前後の日本の状況にとても酷似しています。
日本の企業債務残高は1994年12月末に最大で149.2%に達しました。バブルが崩壊してから、政府の債務残高が急速に増えていっています
経済活動の主体は、家計、企業、政府の3つです。
バブル崩壊後に政府の債務残高が急増しているのは、家計と企業の民間セクターを助けるためです。
中国のバブル崩壊と日本のバブル崩壊が似通っている点はさらにもう1つあります。それは「株価暴落」→「企業債務残高の増加」の経緯です。
日本のバブル崩壊と企業債務残高の膨張
(ステージ1)株価の暴落
1989年12月:日経平均株価が38,915円に到達した(過去最高値)。
<約1年後>
1990年12月:日経平均株価が23,849円まで落ち込んだ(約39%の下落)。
<約4年後>
(ステージ2)企業債務残高がピークを迎えた
1994年12月:企業債務残高が149.2%に到達し、その後、企業の倒産が多発した。
<約1〜5年後>
(ステージ3)金融機関が倒産した
1995年8月:兵庫銀行が倒産する(銀行としては戦後初の経営破綻)。
1997年〜1998年:北海道拓殖銀行(拓銀)、日本長期信用銀行(長銀)、日本債券信用銀行(日債銀)、山一證券、三洋証券など大手金融機関が倒産した。
中国のバブル崩壊と企業債務残高の膨張(+その後の予想シナリオ)
(ステージ1)株価の暴落
2015年6月 上海総合株価指数が5,166に到達した。
<約1年後>
2016年6月 上海総合株価指数が2,913まで落ち込んだ(約43%の下落)。
(ステージ2)企業債務残高がピークを迎えつつある?
現在、中国の企業債務残高は160%以上を突破していますが、ここがピークかどうかは不明です。
(ステージ3)金融機関が倒産する?
ステージ3まで中国が追い込まれるかどうかは現時点では不明です。しかし、企業の債務残高が膨張し続けており、止まる気配がないので、とてもハイリスクな状況になっていることは確かです。
ジョージ・ソロス氏は4月20日に「皆が予想する時期よりも後に転換点を迎える可能性がある」と発言しています。
日本のバブル崩壊のケースでは、株価の暴落から実体経済の崩壊まで4〜5年ぐらいのタイムラグがありました。中国のケースでも、実体経済が崩壊するまで、4〜5年の猶予がある可能性もあります。
中国はどこまで持ちこたえられるか?
そもそも「債務残高」は、GDP比で何%までなら持ちこたえられるのでしょうか?
これはそれぞれの国の状況で値が異なるため、具体的に何%に達したら持続が不可能になる(=借金が返せなくなる)という明確な閾値はわかっていません。
しかし、この分野の研究において、破綻に至る閾値は不明ですが、経済成長が悪化する閾値については統計学的には明らかになっています。
2011年9月、BIS(国際決済銀行)の経済シンポジウムにて、次のレポートが発表されました。
<経済成長が悪化する閾値>
政府:債務比率がGDPの85%
企業:債務比率がGDPの90%
家計:債務比率がGDPの85%
出典:The real effects of debt – BIS(国際決済銀行)
現在の中国の企業債務はGDPで160%を超えており、閾値の約1.9倍の大きさになっています。中国経済の成長にブレーキがかかっているのも無理はありません。
現在、中国はステージ1「株価の暴落」においては、ほとんど日本と同じ状況になっています。
中国は1年後の株価暴落率まで日本とほぼ同じ(約40%下落)になってしまい、ステージ2、ステージ3へと駒を進めてしまうかもしれません。
「GDPが伸びていないのに企業債務が膨張し続けていて、止まる気配がない!」
このデータを重視して、ジョージ・ソロス氏は「中国経済のハードランディングは不可避」と主張しているのです。
中国はどこまで持ちこたえられるか?残された時間は
今回のまとめ〜ソロス氏が中国経済崩壊を確信する3つの理由
ジョージ・ソロス氏は2016年に入り、「中国経済のハードランディングは不可避」と何回も主張するようになった。2016年6月、ついにトレーディングの「現場復帰」を果たしたソロス氏は、以下の理由から、中国経済の崩壊を確実視している。
中国の企業債務残高対GDP比は2010年頃まで100%に留まっていたが、それ以降、増加が止まらなくなってしまった(2015年には160%を突破)
GDPという経済全体の規模が大きくなっていないのに、債務残高だけが積み上がるのは、明らかに良くない傾向である
現在の中国は1990年代の日本の状況に酷似している
ただ、すぐに中国経済が崩壊するとは限らず、ソロス氏が指摘しているように転換点は遅くなる可能性がある。日本の場合、株価の崩壊から実体経済の崩壊まで4〜5年のタイムラグがあった。
英国EU離脱でも中国でもない、ジョージ・ソロスが怯える「第3の危
この1ヵ月、世界中の投資家にとっての最大の関心事は、今月23日に行われる英国のEU離脱(ブレグジット:Brexit)を決める国民投票の結果です。投票日が近づくにつれて、投資会社、ヘッジファンド、英国の中央銀行のそれぞれの思惑が錯綜する中、メディアを巻き込んでの虚々実々の駆け引きが展開されています。
何が起こるかまったく予想がつかない相場の場合、欧米の投資家は伝説の投資家の手口を分析します。その1人が、ジョージ・ソロスです。
ゴールドに逃避した伝説の投資家・ソロスは何に備えているのか?
固唾を飲んで待ち構える投資家たち
世界中の投資家は、英国のEU離脱が世界中の市場に変化をもたらすことを待ち望んでいるようです。彼らにとって、もっとも歓迎すべきことはボラティリティ(価格の変動幅)です。
【関連】ついに現役復帰。ジョージ・ソロス氏が確信する中国経済崩壊のシナリオ=東条雅彦
投資家が、一定の時間内で大きな値動きがあると確信した場合、信用取引であれ、現物株の取引であれ、事前に仕込みを終えておくことによって良好なパフォーマンス成果を上げることができます。
それは、国民投票日の前から動きが出てくるでしょう。当日は、すでにインサイダー情報を掴んだ投資家たちが「売り」、あるいは(信用取引の場合)「買戻し」に入るからです。
しかし、6月23日の結果は、世界の金融を動かしている少数のグループしか分からないはずです。というのは、EU離脱問題は、メディアが予想しているような経済問題ではなく、政治問題だからです。
したがって、残り数日のイベントとしては、エリザベス女王が英国民に何等かのコメントを出すのではないかと予想している投資家もいます。
英国王室が、表だって政治問題に関する発言をすることはないはずですが、2014年9月18日(木曜日)に実施された、英国からのスコットランド独立の是非を問う住民投票の際には、投票日の4日前の14日になって、スコットランドの教会で礼拝を終えた後に「スコットランドの人々が将来について慎重に考えるよう望んでいる」と述べたのです。
この一言によって、スコットランドの独立は流れたと言います。
ですから、いくらテクニカル分析をやってみたところで市場の予想には役に立たず、王室がどんな発言をするのかに注目が集まっているのです。
とはいえ、今度のEU離脱問題では、いっさいコメントしない、ということも考えられます。それはそれで、英国王室の"沈黙の意思表示"と捉えることができます。
金(ゴールド)に避難したジョージ・ソロス
何が起こるかまったく予想がつかない相場の場合、欧米の投資家は伝説の投資家の手口を分析します。その1人が、ジョージ・ソロスです。
ウォールストリート・ジャーナルが、「弱気のジョージ・ソロスがやっと腰を上げた」というタイトルの記事を掲載しています。
グローバル経済や大規模な市場のシフトが目前に迫っているのかも知れません。億万長者のヘッジファンド創設者と慈善家たちは、最近、弱気の投資の方向を目指しているようです。
ソロスと彼の親族が保有する300億ドルの資産を管理しているソロス・ファンド・マネージメントLLCは、株式を売却して金(ゴールド)と金鉱株を買っています。ソロスのLLCは、債券、株式…その他のさまざまな市場が弱気のトレンドに入ると予想しています。
投資家は、経済的な混乱期には、しばしば金を資金の避難所として見るのです。
しばらくの間、トレードから遠ざかっていたソロスが、やっと動き出したと思ったら、株式市場からソロリソロリと撤退して金の現物と金鉱株にしぼって資金を移しているというのです。
このソロスの動きは、世界中で資金の流れに重要なシフトが起こっていることを示唆しています。
弱気"になったジョージ・ソロス、金(ゴールド)買いに走る
ソロスは、1992年9月16日の英ポンド危機によって10億ドル以上もの利益を上げたことから名声を得た人物です。空売りの達人として、世界中のヘッジファンド・マネージャーにとっては、市場の先行き指標となっているのです。
ウォールストリート・ジャーナルが「弱気になったソロス」と書いているのは、どんなときでも株式市場に挑もうとする挑戦的な相場師ソロスは姿は影を潜めてしまったと言っているのです。
それは正しい表現でしょうか?
失敗しない投資家は、相場が長期間、下落すると予想した場合、いち早く資金を市場から引き上げて、資金の避難先として金(ゴールド)の現物買いに走るからです。弱気になったのではなく、しぶといのです。
「でも、それとて金への投資じゃないか」ですって?
いえ、根本的に違うのです。金は「正貨」ですから、利息や利回りがつきません。値動きはしますが、それは金の価値が変化するのではなく、通貨の価値が変動(購買力が変わる)しているので、金の価格が動くのです。あくまで通貨に対して価格が動くのであって、金のそれ自体の価値は不変です。
べネズエラで、今起こっていることを思い出してください。ベネズエラの政府債務は返済不可能なレベルに達し、デフォルトを回避するために政府が行き過ぎた為替介入を行ったため、ハイパー・インフレを招いてしまいました。
人々は食事にありつくことさえままならず、国中で起こっている暴動に巻き込まれて怪我をしても病院では傷の手当てさえしてもらえないのです。
ベネズエラ政府の外貨準備は、とっくに尽きていて、支払期限がやって来た政府債務の決済を行うために、債権者のスイスに金(ゴールド)で支払っているのです。
ベネズエラの通貨は、もはや紙クズほどの価値もなくなってしまったので、どの国も受け取らないのです。このことは、商取引が通貨によってなされるのではなく、実は「正貨=金」によってなされることを示しているのです。
ジョージ・ソロスが懸念する本当の危機
マーケット・ウォッチは、6月9日、立て続けに2本の記事をアップしました。
それは、「ファンド・マネージャーは、中央銀行が次のリーマンショックを引き起こす瞬間を恐怖している」という記事と、「伝説の投資家ソロスは、再びトレードに戻って難局に備えている」という記事です。
ソロスのようなヘッジファンドが、ある程度の規模で保有株を売るということは、コストの負担を伴います。
利益確定ができたのであれば、信用取引で発生する金利を支払っても益出しに成功したことになりますが、そうでない場合に手仕舞いをしたということになれば、損切りですから、ソロスのトレードは失敗です。
トレードが成功したかは別にして、このタイミングで株式を売って金の現物を購入しなければならなかった事情とは、大きな財政危機が差し迫っていることをソロスが確信したと考えていいのです。
たとえ損切りしようとも資金を金に移し変えて緊急避難させる必要が迫っていたからだと。
ソロスが、こうした大きな戦略転換を図ったのはインフレを懸念しているからでしょうか。それは、各国の通貨の購買力が減価されることを意味します。
通常、株価とインフレは連動するので、あえて冒険せずとも、いわゆるディフェンシブ銘柄を保有していればインフレに対するリスクをヘッジしたことと同じ効果が出るはずです。
ソロスは、それにも見向きもしなくなったということは、残すところ「市場の崩壊」ということになるのです。
マーケット・ウォッチの2本の記事を読む限り、ソロスが特に懸念していることの1つは、EU離脱を決める23日の国民投票であることは間違いありません。
しかし、ソロスが心配しているもう1つの大きなことは、シリアを始めとする中東からの難民流入でなく、グローバリズムによってEU地域内で人と労働力の移動がさらに活発になり、英国民の職が奪われることによって経済が停滞すると同時に暴動が起こるリスクが高まることです。
なぜ、英国民はサッチャーに対して抗議デモを行うのでしょう?
鉄の女、マーガレット・サッチャーこそが英国を産業の労働から解放し、"金融帝国として食べていけるようにしてくれた恩人"ではなかったのでしょうか?
サッチャーの新自由主義は、ウィンブルドン現象という言葉で言い表されます。
サッチャーは、ロスチャイルドのロンドン・シティーと英国王室の命を受けて、「ビッグバン」と呼ばれる大規模な金融市場の規制緩和を果敢に進めた結果、ロンドン・シティーの金融支配をいっそう強め、伝統ある英国の地場産業を次々と空洞化させていったのです。
この新自由主義を信奉している学者たちは、例外なくロスチャイルド、モルガンなどの国際銀行家の利害関係者です。
サッチャーの経済政策は、彼女が心酔していたフリードリヒ・ハイエクの新自由主義に基づくものです。
ハイエクの理論は、「市場で何が起こっても政府が介入しなければ、自ずと秩序が形成されていくものであるから、どこまでも市場を信頼し、任せておけばいい」というものです。
フィリップ・ロスチャイルドからの聴き取りによって「アトラス・シュラッグド」を著したアイン・ランドが提唱していた自由放任主義経済「リバタリアニズム」と同じです。サッチャーは、それを知っていたのでしょうか。
ソロスはEUの崩壊よりアメリカの経済崩壊を危惧している
グローバリズムのパワフルな推進エンジン、ソロスは、サッチャーのような次々と送り出されるロスチャイルドの傀儡がどんな政策を実施するのか、よく知っていたはずです。
だからこそ、EU離脱の余波が世界経済にじわりじわり浸透していく恐怖を察知したのでしょう。
ウォールストリート・ジャーナルによると、ソロスがこの種の弱気の動きをし出したのは、2007年に遡るということです。しかし、「弱気」と言いながら、このときもソロスは10億ドル以上の利益を叩き出しているのです。
もちろん、弱気の展望をする投資家はソロスだけではありません。事実、ゴールドマン・サックスはかなりナーバスになっており、「市場にとって不利になる重大なリスクが存在している」と警告しています。
顧客へ通達する注意書きでは、株式投資のストラテジストで、クリスチャンでもあるミューラー・グリスマン(Mueller-Glissmann)が、「市場が下落する重大なリスクがある」とするゴールドマン・サックスの分析を代表して注意喚起しています。
すべての経済指標は世界経済がリセッションに向かっていることを示しています。
たとえば、マイク・シェドロック(Mike Shedlock)は、米国連邦および各州の税収が、2008年の金融危機前と同じように減収になっていることを示しています。個人から徴収した税収からみれば、「すでに米国はリセッションに入っている」とのこと。
2016年5月期の米・雇用統計は、非農業部門雇用者数で予想の16万人を大きく下回り3.8万人と大幅に悪化。
オンライン求人のリンクトインは、73ヶ月(連続)の前年比成長を続けてきましたが、1年前から552000人の減少、この4月からは285000人の減少で、5月は2009年1月以来、最悪の落ち込みとなっています。
先々週、米政府は、この約6年間で最悪の雇用情勢に関する報告を公表しました。その中でも特に酷いのが、レイオフの嵐が吹きまくっているエネルキー産業です。
エネルギー産業の情報サイト、オイルプライス・コム(oilprice.com)は、以下のように報告しています。
今、世界中の石油・天然ガス産業において、35万以上もの労働者がレイオフされています。
テキサスもまた、その痛みを感じている場所のひとつです。
2年前、石油価格の崩壊が始まり、結果、テキサス州の石油産業の3分の1が崩壊して以来、テキサス州では、およそ9万9000人前後のエネルギー産業の労働者が職を失いました。
それは日を追うごとに酷くなっており、2016年の4月だけで、石油・天然ガス産業で働く6300人の労働者が解雇通知を受け取りました。
テキサス州の石油セクターの雇用悪化は、2009年の財政危機の余波以来、かつてなかった最悪のレベルまで近づいています。
国EU離脱問題に乗じて「身を引き始めた」ソロス
米・雇用統計の信じられないほどの悪化は、エネルギー産業における需要見通しの不透明さにあるようです。少なくとも、この点では景気の失速に突入したことは明らかです。
これだけの経済指標がリセッション入りを示しているというのに、アメリカの大半の人々は巨額のクレジットカード残高をせっせと積み上げているのです。
クレジットの未払残高は、2016年末には1兆ドルに達します。金融危機の年の2008年、人々のクレジットカードの未払残高は9842億ドルでした。
ジョージ・ソロスが「弱気になっている」のは、英国のEU離脱によるEUの崩壊懸念が原因というより、アメリカの経済崩壊が目前に迫っていることに対する備えと見る方が正確です。
投資家は、ソロスが株式市場から資金を引き上げて金の現物を買っているという事実は、「おそらく彼が、英国がEUを離脱すると考えているのだろう」と結論付けたいようです。
どうやら、欧米のメディアは、アメリカの経済崩壊に投資家の目を向けさせたくないようです。老いてなお賭事に抜け目のない男は、英国のEU離脱問題にタイミングを合わせて、上手に株式市場から身を引き始めています。
この数年、この85歳の億万長者は、見かけ上は公共政策と慈善事業に集中してきました。
ソロスは、民主党の大統領選候補、ヒラリー・クリントンを支持しているスーパーPACの大口の寄付者であって、民主党を支持している他のグループへも選挙運動のための資金を援助しています。
彼の身近かにいる人々は、彼が急に大人しくなったのは、今年に入ってからである、と証言しています。